お口の健康は発声から!口や舌、喉の筋肉を鍛えましょう

年齢を重ねると声帯を動かすための筋肉が弱くなり、唾液の分泌も少なくなるため、声が出しづらくなります。
しかし、声を出しづらいからといって会話を避けていると、口周りの筋肉がさらに弱まってしまいますよ。

今回は、高齢者における発声の大切さや、楽しく発声するためのアイデアを紹介します。
「なんだか話しづらい、食べづらい、飲み込みづらい」と感じている方の参考になれば幸いです。

年を取るにつれて声が出しづらくなる理由

年を取ると次のような理由から、声が出しづらい・かすれるといった症状が見られやすいです。

  • 声帯を動かすための筋肉が弱くなる
  • 声帯の潤滑油として働く唾液の分泌が低下する
  • 声帯の柔軟性が失われる
  • 声帯が乾燥しやすくなる
  • 肺機能の低下により排出される空気量が減少する

なお、加齢に伴う発声機能の低下は訓練により改善が見込めます。
日頃から声を出すことを意識して、発声機能を高めていきましょう。

高齢者が健康を保つには発声が重要

高齢者が健康を保つには、日々の声出しが重要です
高齢者が発声を心がけるメリットを紹介しましょう。

高齢者が発声を心がけるメリット
  • 口周りの筋肉が鍛えられる
  • 誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)を予防できる
  • お腹から声を出すことで体幹が鍛えられる
  • 会話を通じてQOL(生活の質)が向上する
  • 血流がよくなり免疫力アップが期待できる

人間の発声に関しては、喉頭(こうとう)という器官が重要な役割を果たしています。
喉頭は軟骨で囲まれた管のような器官で、左右には声帯があり、下方は肺につながっています。
声帯の間を空気がすり抜ける際に振動が生まれ、声が出るのです。

このように喉頭は発声を担う器官なのですが、発声以外にも飲食物が気管に入るのを防いだり、誤って器官に混入したものを咳で吐き出したりする機能も果たします。
つまり、発声により喉頭を鍛えることは、高齢者がかかりやすい誤嚥性肺炎の予防にもつながるといえますね

誤嚥性肺炎とは、食べ物や唾液が気道に入ったことがきっかけとなり、口内の細菌が肺に入り込んで起こる肺炎です。
高齢者は「口の中が清潔に保たれていない」または「異物を咳で排除する反射能力が低下している」という状態の方が多く、誤嚥性肺炎を発症するリスクが高いです。

加えて、声を出すことは体幹を鍛え、血流をよくする効果があると指摘されています
会話を通じて毎日の楽しみができ、生活の質が向上する点も大きなメリットといえるでしょう。


参考URL:e-ヘルスネット(厚生労働省)|誤嚥性肺炎

発声の前にはマッサージをしましょう

マッサージをすると唾液の分泌が促されるため、スムーズに発声しやすいです
簡単にできるマッサージを3つピックアップしました。

【耳下腺(じかせん)マッサージ】

  • 指数本を耳の前(上の奥歯あたり)に当てる
  • 10回ほど円を描くようにマッサージをする

【顎下腺(がっかせん)マッサージ】

  • 顎ラインの内側くぼみ部分3~4箇所を順番に押していく
  • 各ポイント5回ほど行う

【舌下腺(ぜっかせん)マッサージ】

  • 顎の中心あたりの柔らかい部分に両手の親指をそろえて当てる
  • 10回ほど上方向にゆっくり押し当てる

発声前だけでなく、食事の前にもぜひ実践してみてください。


参考URL:日本歯科医師会|(唇と)ほほの体操

楽しく発声するためのアイデア3つ

楽しく発声するためのアイデアを3つ紹介します。

  • パタカラ体操
  • 早口言葉
  • コーラス

ひとつずつ見ていきましょう。

パタカラ体操

「パ・タ・カ・ラ」の4文字を発音することで、口周りの筋肉を鍛える運動を「パタカラ体操」といいます
この4文字には、それぞれ次のような目的があります。

  • パ:口を閉じる力を鍛え、食べこぼしを防ぐトレーニング
  • タ:押しつぶす力を鍛え、舌の筋肉で食べ物を喉まで動かすトレーニング
  • カ:飲み込む力を鍛え、誤嚥しないように喉を閉じるトレーニング
  • ラ:舌を丸める力を鍛え、食べ物をまとめるトレーニング

各発音を8回ずつ、2セット行うのが目安です。


参考URL:大阪府歯科医師会|お口の働きを高める体操

早口言葉

早口言葉は遊びながら口腔機能の低下を予防できるので、多くの高齢者施設において取り入れられています
簡単なものから難しいものまで、早口言葉をいくつかピックアップしました。

【簡単な早口言葉】

  • 老若男女(ろうにゃくなんにょ)
  • 肩たたき機(かたたたきき)
  • 生麦、生米、生卵(なまむぎ、なまごめ、なまたまご)
  • 竹やぶに、竹立てかけた(たけやぶに、たけたてかけた)

【少し難しい早口言葉】

  • バナナの謎は、まだ謎なのだぞ(ばななのなぞは、まだなぞなのだぞ)
  • 隣の客は、よく柿食う客だ(となりのきゃくは、よくかきくうきゃくだ)
  • 青巻紙、赤巻紙、黄巻紙(あおまきがみ、あかまきがみ、きまきがみ)
  • 除雪車、除雪作業中(じょせつしゃ、じょせつさぎょうちゅう)

【とても難しい早口言葉】

  • 抜きにくい釘、引き抜きにくい釘、釘抜きで抜く釘(ぬきにくいくぎ、ひきぬきにくいくぎ、くぎぬきでぬくくぎ)
  • 交響曲、歌曲、協奏曲(こうきょうきょく、かきょく、きょうそうきょく)
  • 蛙ピョコピョコ、3ピョコピョコ、あわせてピョコピョコ、6ピョコピョコ(かえるぴょこぴょこ、みぴょこぴょこ、あわせてぴょこぴょこ、むぴょこぴょこ)

口を大きく動かしながら発音するのがコツですよ。

コーラス

コーラスは体だけでなく心の健康にもよい影響を及ぼします
正しい発声を心がけることで、声帯を適度に鍛えられます。
さらに、好きな歌を歌ってストレスを解消したり、歌を通じて自己表現をしたりすることで、毎日イキイキと過ごせるでしょう。

大きな声を出すために深呼吸すると、肺機能の低下を防ぐのはもちろん、全身に酸素が行き渡りリラクゼーション効果が得られます。
コーラス仲間とコミュニケーションを取る、コーラスする場所に出向く、といった行為も健康的な生活につながりますね。

野口院長

コーラスというと「The Singers Unlimitedの『Invitation』」がおすすめです!
透明感があって澄んだ感じが好きですね。
本盤には、ボサノヴァで有名なアントニオ・カルロス・ジョビンの「Wave」をカヴァーした楽曲も収録されてます。
気になった方は、ぜひ聴いてみてください。

声を出すことは健康維持のために大切です

声を出すと口周りの筋肉が鍛えられ、高齢者がかかりやすい誤嚥性肺炎を予防できます。
おすすめなのはパタカラ体操や早口言葉、コーラスに取り組むことです。

お口の健康を保つには、定期的な歯科検診も欠かせません。
野口歯科医院は高齢者医療に力を入れており、訪問医療も行っています。
お口のお悩みは、野口歯科医院にお任せください!

今回は発声方法として「コーラス」を紹介しましたが、来月はクリスマスとジャズに関する記事を発信する予定です。
来月の記事もお楽しみに!